Thunderbirdの日記

桜梅桃李 鏡花水月

ある日の思ひ出 き○お君 ブタの餌編

注)衝撃的な内容が含まれます。


私より一歳上の先輩と一つ下の
後輩になる兄弟がいた。


多分私が10歳ぐらいの頃だったと思う。


おやじは表向きは農業だったが、
夜になるといろんな職業に変身した。


家族5人、6畳一間。


電気はいつも止められていた。


水道はなく、井戸水を手動のポンプでくみ上げる。


外部との境は、障子だけ。


居間とベニヤ板で仕切られたところに
養豚場があった。


夕方にはブタの餌を大きな鍋で煮る。


よく分からないが、突き出した軒先に
竈(カマド)があり、そこに直径1mぐらいの
鍋が乗せてある。


この写真のように上等ではない。
もっとボロボロで、隙間だらけだった。


こんな感じで、実際はあっちこっちにヒビ割れがあった。




薪を斧で割って準備する。


家の周りの枯れ草を集めて火をおこし、
薪に火が移るまで、竹で息を吹き込みながら
うちわで仰ぐ。


兄弟の日課だった。


冬のある日遊びに行ったときに、
その時間になり手伝った。


おもしろかったので、
どんどん薪をくべた。


竈と鍋の隙間から、炎が上がっている。


中に入ってる液体と具が、沸騰し始めて
木の蓋が持ち上がった。


寒かったので、更に薪を追加した。


き○お君の顔は炎で赤く染まり
嬉しそうに笑っていた。
熱で眉毛は全部燃えた。


前歯は虫歯で抜けてなかった。


運が悪いことに、風が吹いてきた。


ものすごい勢いで燃えている薪の炎が、
障子の紙に燃え移った。


50cmぐらい離れてるので、燃えるとは
思ってなかった。


後で聞いたところ、加熱で異常に乾燥すると、
直接火をくっつけなくても発火することがあるらしい。


あっという間に障子紙が全部燃えた。


き○お君の顔は、さっきまで赤く火照り
歯が抜けた口を開けて笑ってたのに、
今は青くなっている。


信号機みたいだと思った。


先輩が炭になった障子を外し、家の外に投げた。


幸い、柱や天井に火が移らなかったので、
延焼しなかった。


家の中では、複雑な関係の腹違いのおかあさんが、
こめかみに膏薬を貼って、せんべい布団に
寝込んでいた。


家の中が外の気温と同じになった。


鬼の形相で寝たまま睨まれた。


沸騰させすぎて水分がなくなり、
ブタの餌は全部黒焦げになった。


野菜の焦げたにおいと煙と異臭が
家の中に充満した。


き○お君が、小声でやばいと言った。


私の冷静な判断で、すぐ近くの
川からバケツに水をくんできて、
竈に引っかけた。


急激に冷やしたので、土で作ってある竈が
3つに割れて鍋が落ちた。
衝撃で灰が舞い上がり、風にあおられて
全部家の中に入った。


おかあさんも真っ白になった。


き○お君が、もうダメだと小声で言った。


障子があったところには、鎮火したあとに
畑にかぶせる透明のビニールを貼った。


外から丸見えだが、川向こう地区には
一軒しか家がなく、何の問題もなかった。


短時間にいろんな経験が出来たと思った。


ブタを飼うのは大変なことが分かった。