Thunderbirdの日記

桜梅桃李 鏡花水月

ある日の思ひ出 たけ○こ先輩 ブルーバードU編


シャレにならない先輩がいた。


普段は、もの静かでおとなしいが、
スイッチが入ると怖い。


家業の鉄工所を手伝っていた。


私には極めて優しかった。


ある日の深夜に、先輩のブルーバードU
通称サメブルに、5人乗って
ドライブに出かけた。


私は後部座席に座った。


エンジンは、元が何だったのか
分からないくらい合法的に改善されていた。


足回りはノーサス。


デフは溶接で固めてある。


静かなマフラーは車体の真ん中ぐらいまでしかなかった。


コーナーの手前ではタオルで手を拭く。


減速しながら、ハンドルの上部を
両手で挟むように持って、
45度ぐらい瞬間的に回してすぐ戻す。


そうするとケツが横っ飛びして、
リヤタイヤがキュッキュッと鳴る。


これをコーナーで3回から5回繰り返して曲がる。


スピード的には遅くなるが、当時は
この曲がり方がかっこいいとされていた。


サーキットの娘(狼ではない)の見過ぎ。


多角形コーナーリング。


後部座席に乗ってると、
左右に振られて首が痛くなる。


タイヤは当時の高級品ピレリP7。


直線の最後付近が少し登って右にカーブしながら
下りになってるところに、いつもよりオーバースピードで
突っ込んだ。


上り詰めて、下りになったところで、大きくケツを振った。


車は、無重力になったような感じになり、
ノーサスなので、タイヤは殆ど浮いていた。


左側のタイヤが接地したときに、
右側のタイヤが大きく浮き上がった。


後部座席の全員が左側に飛ばされた。


そのまま横転して天井で走った。


しかも裏返しのまま右方向に回転している。


アスファルトと天井がこすれる音がすごかった。


後ろ方向には、火花が飛び散っているのが
一回転ごとに見えた。


両手で天井を支え、踏ん張った。


手に道路の凹凸を感じる。


人間サスペンション作戦と名付けた。


もう少しで止まりかけたときに、
ガードレールの切れ目から海に落ちた。


窓を開けてたので、ドアはすぐ開いた。


運がいいことに水深が1mぐらいしかなく、
立つことが出来た。


満潮のときじゃなかったら、岩に当たって
すごい衝撃だったかもしれないと思った。


みんなちょっとびっくりした。


お気に入りのヤマトのスリッパが片方なくなったのが
悔やまれたが、誰も怪我しなかった。


海面にタイヤだけ出ていた。


潜水艦のようだと思った。


運転手だけ残り、夜中に約15km歩いて帰った。


家に着くまでには洋服も乾き、
風呂に入る手間が省けた。



ノーサスはおとろしいことが分かった。