Thunderbirdの日記

桜梅桃李 鏡花水月

欲しいバイク1 Z2 写真は関係なし

みんなかっちょいいーーーー


性能はともかく、デザインがいい。


キャブのセッティングのアンバランスや、
作りの雑さはカワサキの特徴。
黒塗りエンジンの塗装も掃除しすぎると剥がれる。


キック付きなのも味がある。
センタースタンドで立てて、片手でキックし
軽くかかるエンジン。
ケッチンもない。
新車のときは、本当に手でかけていた。


マフラーはヨシムラの集合管がいい。
ハンドルはセパハン
提灯クラスの照度しかないヘッドライトは
ハロゲンにリレーキットごと交換。
金持ちはシビエを付けてたような気がする。


CRキャブ+エアーファンネルに交換。
オイルクーラーは必要なかった。


フロント19インチの立ちの強さは特筆もの。
ハンドルをこじって無理矢理寝かせる。
切り返しがとても重い。
まっすぐ走るのに最適化された作り。


アクセルのリターンスプリングを外し、解放時の戻りをなくす。
強制開閉式のメリットを出すために、ワイヤーの
遊びを極力なくす。


ミラーはかっこいいが、面積が小さくてあまり見えない。
Z750Dから、リアがディスクブレーキになり、
コーナーリング中のリアブレーキでの挙動コントロール
出来るようになった。


後に、キャスター角を立てて、機動性を向上させようとしたが、
19インチをねじ伏せることは出来なかった。


テール周りの反射板の面積が、設計的に不足していたらしく、
知らないおぢさんが来て、かっこ悪い反射板を
強制的に取り付けられた。
お尻周りの見た目が重くなったのと、お気に入りのテールカウルの
デザインとマッチしないので、作業が終わった直後に
自分で取り外して、仏壇の棚に保管した。
車検の時に必要なので、大切な物はここに入れておく。




ある日、町内商店街にあるレコード店の正面に、
かっこいいZ2が止まった。
セパハン、ヨシムラ集合管(消音器なし)、シートのあんこ抜き、
Zミラーは右側だけ、飴色のグリップ。
どう見ても族車仕様。


店内に入ってきたおにいさんは、古い革ジャンに、所々白くなった
黒いライダーブーツを履いていた。

当時はヘルメットは、出来るだけかぶりましょうの
時代だったので(多分)、ノーヘルが多かったが、
おにいさんはつや消しの黒いジェットヘルに
白いラインが斜めに2本入ってるのをかぶっていた。
暴走ラインってやつだった。
グラサンは定番のスペクター。

レジのおねえさんに、かっこいい声で、
「オレンジ村から春へ」はあるかにゃ?と声をかけた。

びびったおねえさんは、慌てて探して来て持ってきた。

A面は「家へおいでよ」で、その曲はB面だった。
ますますかっこいい。


男は、B面の曲を指定して買うものだと思った。

百円玉で500円払い、レコード店名の印刷された
黒いビニール袋に入れて受け取っていた。
レコード店の「お得意様30円割引券」もしっかり貰っていた。


男は財布を使わない。
ズボンのポケットに丸めて入れていた。


店の外に出ると、おもむろにZ2にまたがりキックで
エンジンをかけ、アクセルを数回あおったあと、
レコードを胸元から腹に入れて、かすかな
オイルの匂いと爆音を残しながら
人のいない商店街の中を走り去った。


かっちょええ~~~~~~~


全く買う気がなかった「オレンジ村から春へ」を買えば
自分もかっこよくなれると勘違いし、500円で買った。


今でも大切に持っているが恩恵はない。


元が悪い人は、B面を指定して買っても
かっこよくなることが無理なことが分かった。


この経験が、Z2が欲しい魂に火を付けた。
毎日バイク雑誌を見て、切り抜いた写真を下敷きに入れ、
ひどいときは枕元に置いて寝た。
エロ本よりもテレビよりもバイク雑誌ばかり見ていた。


ヤングマシン、オートバーイ、モーターサイクリスト、
この3冊を毎月買って、広告の端から端まで繰り返し読み倒した。
後ろの方に、通販の広告があったが、そこに目出しマスクのような
ものが毎月載っていた。
「フルフェイスマスク」を「フルフェイマスク」と書いてあった。
大人が書いてるのだから、「フルフェイマスク」が正しいんだと
自分に言い聞かせていた。
この疑問は、未だに解決出来ていない。


男は疑問が残ったまま、歳をとることが分かった。